布団なる石川博作の品々

タイトルに意味はない。ただただ石川博品の作品を紹介するのが今回の記事である。

 

 何事にも切欠は必要である。年末に発売された「先生とそのお布団」なる文庫が、思いの外よかったせいもあろう。あるいは、そろそろ記事を書かねばと重い腰を上げようと、年の暮れにもなって思い始めたせいやも知れぬ。そんな折に筆を執ったものであるから、今回の記事はまた一段と酷いものになるに違いない。実際には手に持ってはいないはずの筆までも投げ出しいたい気持ちにかられる。それが今年の年の暮れであった。(この文章にも意味はない。)

先生とそのお布団 (ガガガ文庫)

先生とそのお布団 (ガガガ文庫)

 

 この本は、作品を作るということを記した、ライトノベル作家石川博品」の自伝的私小説である。あるいは、「異世界転生 チート能力」の代わりに「我が家に 人語を解する猫」を武器に、真摯に作品を作るということを教えてくれる、”(物書に)なろう(人のための)”小説である。是非とも一握りの特別な人たちの背後にある「特別でない誰かが、特別でない作品を作ることの、特別さ」を感じて欲しい。

 また、この人の作品を読んだことのある人は、一度は感じたこともあるかもしれない。あるいは、この本を読んでいて、途中で思うかもしれない。「何でこの人はライトノベルを書いているんだろう?」と。 あるときは、ライトノベルで純文学パロディものをやらかしてみたり、この本では、作品を推敲する内容が、”今の”ライトノベル作家のソレではないこととか。その理由を含めて、これまでの作品の背景にあるものが題材とされているため、石川博品の作品が好きな人にとっては貴重かもしれない。

 また、ファンで知らなかった人には、朗報である。商業出版されなかった作品は、同人誌で出している。委託は基本的にCOMIC ZINらしい。そして私は、耳刈ネルリ拾遺をポチった。

 

 

 石川博品ライトノベルの特徴としては、人を選びはするが、文章がよい。その反面、”今の”ライトノベルで求められる インパクト、キャラクター、ストーリー、設定が弱い(この人の作品が例えカオスだとしてもだ)。オレツレー(今となってはオレツエー優位である)やキャラクター先行物、メタッタ設定一発屋の全盛期(ある意味、荒廃期)において、これは辛い。一言で言って、ライトノベルに向いていない作品である。逆に、文章を読みたい傾向にあるマジョリティの一部には、熱烈なファンがいる。そのため、同人誌から商業化なんて作品もあったりする。

青春(or ラブコメ)物

 石川博品の青春物は順を追って読んでいくと楽しい。なぜなら、順当に成長していることがわかるからである。

 内なるシド・ヴィシャスと対話できるキング・オブ・パンクス(クズ)な少年が、ナカトミーノ・ディ・ムラージ, カマタリ(2655年)の襲来によって、シド・ヴィシャスと袂を分かつことになったことから、物語は始まる。パンク(クズ)でなくなってしまった少年は、ナカトミーノによる「強くてニューゲーム」なる装置を利用し、言われるがままに、蘇我家の女性を攻略し始める、それなりなライトノベルである。

 この作品の一番の特徴は、石川博品の中では最もラノベらしい作品である。主に文章が読みにくい点において。(その半分以上は、編集者のせいでもあるが)

 

 昼は人間が、夜は夜行性の人間(ヴァンパイア)が社会活動をするという、如何に効率的に24時間社会を回していくかを考えたときに生じるミッシングリングを、ヴァンパイアを持ち出して解決を図っただけの社会を舞台とした、青春恋愛ものである。

登場人物・・・特に主人公にどこか癖があり、垢抜けない感じがするライトノベルながらも、前作と比べて洗練された文章で読みやすく、あっさりとしながらもきれいにまとまった作品となっている。悪く言えば、こぢんまりした作品ではある。

 

 人の指示で学校の制服でもない制服を着て、男に媚を売るヤツは売春婦だけだ。恥を知れ! そんなビッチの分際でアイドルを名乗るやつがいたら、沖津区から生かして返すな! 真のアイドルは、本当の制服を着て、自分たちで歌を作り、何より自分たちの意思で活動をするんだよ。

「アイドルやりたきゃ、今やれ! 早くやれ! うまくなるのを待たないでやれ! そして何より、沖津区でやれ!」

・・・という、アイドルでパンキッシュ、そして熱い青春コメディである。

 文章は読みやすく、読んでいて楽しい。その上、作品として弾けている。文章、作品性のいずれも過去の問題を乗り越えた、石川博品の青春モノの最高傑作である。その上、無口キャラを主人公の一人とすることで、地の文での補足を可能にし、新たな魅力付けの方法を生み出してしまった。

 

 エセ文学モノ(多分に失礼!)

 ライトノベルでありながら、異国情緒あふれる雰囲気を作り出してしまっていたり、純文学パロディものだったりと、もっとも石川博品らしい、石川博品しかかけないであろう作品である。そのため、癖は強く、かなり人を選ぶが、好きな人ははまる。

 

 ロシア文学パロディ。2巻でやったことは本当にお化け。シモネタ多し。

 

 ハーレムラノベを書くなら、ここまでのハーレムを書いて見せろ!という感じの異国情緒溢れるガチ・ハーレム&野球で小ネタも多い。男の主人公が女装してハーレムに忍び込む、よくありそうなハーレムラノベものなのに、ラッキースケベ?何それ?おいしいの?な作品。2巻で打ち切った集英社マジ常識人デ許すマジ。

 

四人制姉妹百合物帳 (星海社文庫)

四人制姉妹百合物帳 (星海社文庫)

 

 日本文学オマージュなムゲーでシモネタオオシ。百合モノ。オマージュ元の作者に叩かれてしまえ!