STEINS;GATE 0

ファンディスクでは我慢できないオカリン好きのための作品

シュタインズ・ゲート ゼロは、シュタインズ・ゲートの続編・前日譚。シュタインズゲートに辿り着けなかったβ世界線で、岡部倫太郎が執念の鬼となるため、再び立ち上がるまでを描いた物語の公式外伝小説をベースにゲーム化されたものだ。

※注意:シュタインズ・ゲートがプレイ済みであることが必須な作品です。未プレイの方は完全にお断りになります。

そのため、未来を描いた作品ではないが、境界線上のシュタインズゲートに繋がる物語であるため、ファンディスクでは物足りなかったファンには満足できる作品となっている。ただし、注意して欲しい。この作品の全てはシュタインズゲートに辿り着くためにある。この作品のカタルシスは、全て境界線上のシュタインズ ゲートにある。

シュタインズゲートに辿り着けなかった物語であり、挫折と失敗の物語であり、敗北者の物語である。ここにカタルシスはない。あってはならない。そのカタルシスこそが、全ての成果が境界線上のシュタインズゲートなのだから。もし、シュタインズゲートの様なカタルシスを期待するだけの人間がいるなら、手にするべきではない。ましてや、カタルシスがシュタインズゲートの良さではないのだから。

逆に言おう。カタルシス的な展開に目を奪われがちだが、しっかりとあるシュタ インズゲートの良さがこの作品にはある。そして今回はそれが重要な要素ではないかと考えている。ただただ、前日譚を描くだけなら既に公式外伝小説がある。 それがゲーム化したことの答えではないだろうか。

さて、ネタバレを踏む覚悟があれば、各ルートの感想が書かれた続きを読んでいただこう。

 

 

シュタインズ・ゲート ゼロは、β世界線へ復帰後に、鈴羽ともにタイムマシンで牧瀬紅莉栖の救出を行うも、自らの手で牧瀬紅莉栖を殺してしまったことで、岡部倫太郎は挫折する。未来からのDメールも、まゆりの叱咤もなく、救出を諦めてしまう。

それから数ヵ月後、一般的な学生として過ごしつつも、トラウマを抱えた岡部倫太郎はゼミの手伝いで、ヴィクトル・コンドリア大学から来日したレスキネン教授の公演に関わったことで、物語は再び動き出す。

そう、無印シュタゲではなかった、どう考えてもバッドエンド後としか思えない物語で、精神安定剤服用中、精神内科などで治療中というかなりボロボロな状態のオカリン。

そして、○○科学シリーズの物騒な大学でおなじみのヴィクトル・コンドリア大学の人間が直接関わってくるため、○○科学シリーズで気になっていた人には気になる内容ではないだろうか。

 

無限遠点のアルタイル

 まゆりエンド。ドラマCD「無限遠点のアークライト」を下地にした公式外伝小説「閉時曲線のエピグラフ」「永劫回帰のパンドラ」「無限遠点のアルタイル」に沿って描かれた今作のメインとなるルート。

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境界線上のシュタインズゲートへと直接繋がるルートであり、境界線上のシュタインズゲートの「あきらめるオカリンに対するまゆりの叱咤」「未来からのDメール」を実現するために必要な物語となっている。

交差座標のスターダスト

 今作のトゥルーエンドで、無限遠点のアルタイルと一応別れているものの、実際は無限遠点のアルタイルのエンディング。無限遠点のアルタイルだけで考えると無駄な分割でしかないが、他ルートの必要性を表現している演出のため、無駄ではない。幾つもの未来を犠牲にした上で、やっと境界線上のシュタインズゲートに立てるのだから。

私秘鏡裏のスティグマ

無限遠点のアルタイルのバッドエンド。うん。 それだけの意味しかない。些細な違いから起きるバタフライエフェクトって怖い。

相互再起のマザーグース

 新キャラのかがりエンド。無限遠点のアルタイルの世界線からやや異なる世界線。

シュタインズ・ゲートのテーマの1つである、歴史や未来を作るのは、過去だけでなく、現在や未来からも作られていることを象徴するルートとなっている。わかりやすく言えば、過去の改変だけでなく、現在の行動やそれに連なる未来で起きる出来事でも、世界線は変動するということ。そもそも、シュタゲの世界はタイムマシンによって、未来と過去が繋がってしまっているため、過去に影響を及ぼす未来が変わることで、過去自体が変わってしまうから。

存在証明のオートマトン

 新キャラの真帆エンド。無限遠点のアルタイルの世界線からやや異なる世界線。

 シュタインズ・ゲートのテーマの1つでもある、おかれた境遇によって、人は善くも悪くもなるということを象徴するルートで、実質的な萌郁ルート。萌郁がFB以外に大切なもの、友達と言う繋がりを持てるルートであり、片付けれない女同士の真帆と萌郁の友情が描かれる。

そして何より 綯様!はい!綯様! である。

片付けれない女同士の友情が、最強執事の黒木さんの心を砕くとき、綯ちゃんが真の姿を現す!

因みに、Amadeus紅莉栖が本物の紅莉栖であるように、平行世界の記憶を持ったように振舞うシーンがあるが、脳と同じ挙動を模せば、同様に意識も宿ることを象徴するシーンで、偶発的にリーディングシュタイナーのような現象が起きている。

盟誓のリナシメント

 紅莉栖エンド。シュタインズ・ゲート ゼロの実質的なメインルートであり、境界線上のシュタインズゲートに至るためのβ世界線の物語「無限遠点のアルタイル」に至るためのβ世界線の物語となっている。

無数の未来の犠牲の上に、境界線上のシュタインズゲートが実現されたことを実感させられるルートで、β世界線における挫折も無駄ではなかったことを象徴している。

そして、皆さんお待ちかね。唯一といってもいい鳳凰院凶真復活ルートである。そして、紅莉栖エンドとなっているものの、ある意味でルカ子ルートと言ってもいいかもしれない。

第三次世界大戦勃発後の未来において、鈴羽が「ルカ姉さんはすごかった」という程の戦士にあのルカ子が成長しているのである。オカリンが挫折した後も、清心斬魔流の修練を続け、オカリンとの再会を胸に戦い続けた。そして、最後はフェイリスとまゆりをかばい、死んでいく。そして、その姿がオカリンの心を打ち、再び立ち上がらせる。

 

 

 各ルートの感想をざっくり書いたが、シュタインズゲート世界線の価値を改めて感じさせてくれる内容で、シュタゲ好きであれば、損はしないんじゃないかなと思う。