アニメ化の功罪 ~俺の妹がこんなに可愛いわけがない 12巻~

俺の妹がこんなに可愛いわけがない」12巻は賛否が分かれる作品である。実際、賛否両論なんてものではない。「気持ち悪い」という侮蔑か、よくやったという賞賛である。なぜこうも分かれ、どうしてこの結末を書くに至ったのか。それが今回の主題である。

 そもそもこの作品は、妹モノといえば、妹萌え作品であり、偽妹か実妹かに関係なく、恋愛対象としての妹が溢れかえっていた状況の中で、恋愛対象としてでなく、兄弟として、そして、妹のためにがむしゃらにがんばる兄という妹燃え作品だった。話の作りが結構強引なところも多かったが、話の熱さと珍しい妹燃えということでウケた。

 そして、読者からの人気が出てアニメ化されたわけであるが、アニメから入った人にとっては、キャラ萌え作品として映った人が多かったのではないだろうか。原作でもキャラの魅力がないわけでないが、もしそれだけであれば人気は出なかったと思う。やはり、その作品性の珍しさがウケた結果だと思う。しかし、アニメ化されたことで、読者層が一変する。その結果、妹燃えという作品性とキャラものという2種類の読者層が混在することとなった。そしておそらくは、後者の方が人数が多かったのだろう。

実はこのシリーズ、桐乃がアメリカに留学してからの5巻以降では方向性が変わっている。それまでのシリーズはあくまで妹を主題として、それに対する兄のがんばりを描いていた。そして、アニメ化で読者層が混在して以降に出版された5巻から、主題は兄であった京介に移り、あくまでも京介を中心としたキャラもの作品としての方向性を進むことになった。

もっとも、このままなだけであれば、妹を助けていた兄が、今度は兄が妹に助けられる構図になるのも、作品を続ける方向性としては悪くないとみんな思っていたのだと思う。そもそも4巻は最終巻であってもおかしくない作品であり、4巻での完結は作品としてかなりきれいな部類だったからだ。それで、続けるのだから、これまでと同じ方向性でないのも無理のないことだったと思う。しかし、そのまま突っ走った結果、最終巻の12巻で描かれたのは、手放しではないものの、実質、妹との恋愛エンドだった。

当然、恋愛対象として妹を見る妹萌え作品にうんざりした、あるいはそれを気持ち悪いと思う人の支持で作られた作品のため、多くの人から最低な評価を受けた。それと同様に、アニメ化以降に入ってきたキャラものとして見る人からは、妹萌えだろうと関係なく、人気キャラの桐乃エンドとなれば高い評価を喜んでした。作者自身もラストは悩んで決めたようで、おそらく、キャラものとして見る読者が多く増えたことで、恋愛として妹エンドでも問題ないとして決心をしたのではないだろうか。結局のところ、がむしゃらにがんばる兄を描きつつも、本質的にはよくある妹萌え作品が書きたかったのである。

 正直、私としてはどうでもいいため、最終巻の感想は省かせてもらった。というのも、萌えという意味では、作者の「ねこシス」の方がすばらしいからだ。しかも猫萌え作品である。妹であるだけで猫に勝てるはずがない!因みに作者は、次の作品の「エロマンガ先生」ではあっけらかんとした妹萌えを書いているようである。