耳刈ネルリ

耳刈ネルリは、石川博品による「耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳」、「耳刈ネルリと奪われた七人の花婿」、「耳刈ネルリと十一人の一年十一組」の全3巻の作品である。1巻のタイトルからもわかるように、ラノベの中でも色物の作品である。

耳刈ネルリと十一人の一年十一組 (ファミ通文庫)

耳刈ネルリと十一人の一年十一組 (ファミ通文庫)

 

 

しかも、色物の中でも色物であり、出落ち作品だったり、痛々しい電波な作品という意味での色物ではない。ライトノベルでありながら、ロシア文学特有の暗い雰囲気を全体に落としている。何を勘違いしたのか、ライトノベルで純文学を描いたかのような、エセ文学的な作品である。これだけでも、人を選びそうなのに、下ネタ好きな作者のため、主人公の会話に下ネタが多く、人を選ぶことこの上ない作品となってしまっている。

また、2巻においては何を勘違いしたのか、とんでもない事をやり遂げている。普通は学芸会で演劇のシーンを描くにしても、一部分だけを行ったり、そもそも演劇の内容を描くことはない。しかし、石川博品である。当然描く。物語よりも演劇の内容がメインだと言わんばかりに、本の3分の1くらいを使って描いている。後書きも、悪く言えば、何かを勘違いしたかのような、作家ぶった後書きである。

しかし、このエセ文学チックで、純文学を下地として物語を書くのが、石川博品の特徴であるし、作品全体から感じられる文学チックな雰囲気こそが魅力でもある。間違いなくライトノベルとして色物ではあるが、一度は読んでみてもいい色物だと思う。